To be or not to be

好きなことを書き散らします

アイドルは意外と客を覚えている

アイドルは意外と客を覚えている、という話。

アイドルオタクじゃない人には信じがたい話のひとつに、アイドルが個々のファンの顔とか名前を覚えているという話。もちろん一見さんじゃだめだけど、繰り返し行っていると普通に覚えられるものらしい。

まあ、歌とかダンスとかあっという間に覚えちゃう子たちだし、記憶力が悪いわけがない。

僕は逆の経験しかなくて、最近売れている「BiSH」がまだデビュー当時、握手会でアイナ・ジ・エンドになんか適当なことを言ったら見抜かれて冷たくあしらわれたことがあります。
しかも、Twitterで反省を述べたらメンションしたわけでもないのにアイナから「いいね」されてて、本当にアイドルはある意味“怖い”なと。

昨日も、「Fullfull pocket」の石井栞さんと数ヶ月ぶりに2shotチェキを撮ってサインを入れてもらったのですが、「xxxxxxです」とTwitterのハンドル名を言ったら上目遣いで「…久しぶり?」と。前回のとき僕のハンドル名を初めて言ったのに認知してくれてて嬉しかったのですが。

「ごめんね、忙しくて」「ううん、いいのいいの」と言ってくれましたが、本当のことは言えませんでした。

さくら学院のライブに行くのが忙しくて、4か月近く、これなかったなんて…。

Fullfull Pocket(フルフルポケット)『Pop Classic LIVE TOUR 2018-2019~POP!POP!FINAL!~』

昨日は、渋谷WWWでアイドルユニット「Fullfull pocket」(フルポケ)のライブに行ってきました。

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https://twitter.com/fullfullpocket/status/1122156168149815296

フルポケは、元々は日本唐揚協会とタイアップした「からっと☆」というグループでした。2010年〜2015年くらいのアイドル全盛期には、さまざまなコンセプトのアイドルが生まれました。

「からっと☆」はその安易に思えるバックグラウンドとは裏腹に、大手モデル事務所の美少女モデルから選抜して、AKBやSMAPに曲を提供していた作曲家の多田慎也氏をサウンドプロデューサーに据えた、かなり本気度の高いアイドルでした。

多田慎也氏の最大のヒット作は、AKB48の『ポニーテールとシュシュ』ですが、ももクロの好きな人には初期の名曲『白い風』の作者と言った方がピンと来るかもしれません。

とにかくアイドルに欠かせない“青春の儚いキラメキ”を、さまざまな手法を使ってエモーショナルに歌わせることにかけては天才的だと僕は思っています。

「からっと☆」は可愛い子ばかりで、良曲しかない、ということで一部のアイドル好きの間では評価が高かったのですが、1stアルバム発売を目前にして、突然の解散に追い込まれてしまいました。この理由は未だに明らかになっていません。

しかし、解散の2カ月後に「Fullfull pocket」としてリスタート。その後、ちょっとづつ活動を加速しながら、ようやく一昨年末に“からっと☆”時代の楽曲も含めた2枚組のフルアルバムを発売に漕ぎ着けたのですが、年明けに長年頑張ってきた中心メンバーの2名が卒業して再び存続の危機に。

そこで、からっと☆時代に最年少の小学生だった石井栞さんがリーダーとなって引き継ぐことを宣言し、新メンバーを入れてフルポケ2期として再スタートを切ったのが昨年4月。

未経験者2人を含むゼロからに近いリスタートでしたが、運営もかなり本気が入ってきて、よりコンセプチュアルな楽曲や衣装を用意する一方で、新規のオタクが盛り上がれるように、コール動画を公式側が用意したり、ノンストップ無料ライブをやったりチェキ券付きの格安チケットを販売するなどの積極的な経営に打って出て、中心メンバー離脱で減ったファンを呼び戻したり新規ファンを獲得していきました。

運営だけでなく、メンバーの努力も素晴らしく、歌もダンスも観る度にどんどんレベルアップしていきました。初めて会ったときは、最年少で小さくて元気ばかりだった石井栞さんは、リーダーとして美しくしっかりと成長し、いまや立派なグループの大黒柱的な存在になりました。歌の安定感、ダンスの表現力において、まだ伸びしろはあるにせよ、現在の日本のアイドルシーンにおいては、トップレベルに近づいているのではないでしょうか。

“フルポケを大きくしたい”。みんなが愛したこのグループを、上を目指してもっともっと有名にしたい。彼女の熱い思いがちょっとずつ実を結んで、昨年は横浜アリーナのメインステージに立つチャンスを掴めたし、ことしは4月からFM富士でレギュラー番組も始まりました。

フルポケの現場(ライブのことをオタクは“現場”と呼びます)は、熱さと一体感と優しさに満ちた世界です。

盛り上がる曲では楽曲をかき消すがごとく怒号のようにコールが響きますが、多田慎也氏が生演奏するバラードパートでは、全員が聞きいって完全な無音状態になります。写真撮影やメンバーに花束贈呈などがあるときは、何も言わなくても前列の客はしゃがみ、中程の客は腰をかがめて観客全員がメンバーのセレモニーに参加できるように気が配られます。

アイドル現場は、金と欲と承認欲求にまみれた世界のように誤解されがちですし、実際そういう側面もゼロではないです。

その一方で、歌うこと踊ることが大好きで夢に向かって頑張る女の子たちがいて、歌とダンスと可愛い女の子が大好きで純粋な「好き」という気持ちで応援するファンがいる。

そんなアイドル現場の楽しさと美しさが、フルポケには確実にあるのです。

 

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「日本では強い女の子は圧倒的に損なのだ」という謎

「日本では強い女の子は圧倒的に損なのだ」

https://www.hayakawabooks.com/n/n43e828d04384

 

これたぶん、全国平均的には事実なんだろう。僕自身は、いろいろな会社を転々としてきたけど、どこも大きくても小さくてもITでベンチャーだったから、比較的民主的で女性がおおっぴらに抑圧されていることはなかったと思っている。

でも、ネットでは酷い差別の体験談とか、女性から社会に対する恨み辛みに出会うことも日常茶飯事で、自分は日本の社会の上澄みみたいな幸運な領域で生きているのだなと思う。

それにしても「日本では強い女の子は圧倒的に損なのだ」というのは、とても不思議なことだな。いまの日本では、フィクションの世界では「強い女性」が圧倒的に好まれる。典型は、宮崎駿のアニメに出てくる女性たちで、ナウシカやキキみたいな可愛いヒロインだけでなく、クシャナとかドーラとか、エボシ午前、モロの君、湯婆婆…みんな好きでしょ? 特に僕はドーラが大好きなんですが。

ここら辺はまだしも、いまの日本のマンガ・アニメ・ゲーム界隈には「戦闘美少女」的な主人公が多すぎて、ちょっとキモチ悪いくらいだったりする。強い美少女が悪くて醜い男を倒すさまに、多くの男性ファンは倒錯的な喜びを感じているのだろうか。

正直、僕自身の中にはそういう倒錯的な感情はかなりあると思う。例えば、男性主人公が強大な敵と智恵と勇気で戦う『とある魔術の禁書目録』よりも、そのスピンオフで“強大な敵”のひとりである女子中学生を主人公にした『とある科学の超電磁砲』のほうがだいぶ好きなところとか。

先日のスゴ本オフでゲットした冒険SF小説『グラン・ヴァカンス』でも、主人公は少年だったけど、謎の侵略者から世界を守る戦いの中心になるのはやっぱり5人の女性でした。世界を救う強大な力の担い手は女性で、主に男性は純粋な愛によって強い女性を支える、というのが今の日本のサブカルで人気のある物語構造のひとつなのは間違いない。

リアル社会では、女性に“女性的”な役割を押しつけながら、フィクションの世界では、女性に“男性的”な役割を持たせることに喜びを感じている? なんなんでしょうね、このミスマッチは。

それとも、“女性性”を押しつける男性と、“男性性”を押しつける男性は別の層なのでしょうか。さらに言うと、押しつけているのは、男性だけなのか、それとも男女両方がジェンダーの“押しつけ”をしているか。

もしくは、ジェンダーはそれぞれの持つ願望を表出しただけの、単なる同調圧力なのか。

 

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武藤彩未『前夜祭ライブ 〜平成ラストバースデーライブ〜』

昨夜は渋谷WWW Xで、武藤彩未さんのライブに行ってきました。ギター、ベース、ドラム、キーボードの4ピースのバックバンド、それもキーホードは、中島みゆきのバンマスなどを勤める大御所の小林信吾さんが担当するという、贅沢な編成。オリジナル曲のほか、平成初期の90s J-popもセトリに入るという、聞き応えのある楽しいライブでした。

 

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大手芸能事務所アミューズの秘蔵っ子だった武藤彩未さんは、2013年にソロアイドルとしてデビューして、端から見れば決して悪くないポジションにあったと思うのですが、2015年12月に、「自分の中に確信がなければ、これから歌を続けていくことはできない」と突然活動休止を宣言して、まるで武者修行に赴くがごとくニュージーランドに留学し、アミューズとの契約も解除してしまったのでした。

その後、ときどきYouTubeに歌を投稿してはいましたが、昨年末に3年ぶりに活動再開を宣言。それを待っていたファンは少なくなく小さなライブハウス公演は凄い競争率で、今回、キャパ500の少し大きめの箱になってようやくチケットが当たって行くことができました。

3年半ぶりに見た、武藤彩未さんは、あの頃の「私売れなくては、頑張らなくては!」という肩の力が抜けて、リラックスして聴けるとても素敵な歌手になっていました。

彼女は、小学生時代は、マンガ雑誌「ちゃお」のCMキャラクターを何年も務めていて、いまの20代女性の憧れの存在だったようです。その後、アニメ『絶対可憐チルドレン』の主題歌を歌うユニット「可憐Girls」や、成長期限定ユニット「さくら学院」の初代生徒会長に抜擢されて、キッズタレントのトップランナーとして走り続けていました。

ある意味、ずっとお手本でなければならなかった優等生アイドルが、優等生であるがゆえにがんじがらめになってしまっていた。それを一旦リセットして、もう1度、自分が好きなことを、自分の力で、自分の仕事にする。

それを20代のはじめにやってのけたことが凄いなと思うし、大袈裟に言うと、これからの日本人の生き方のひとつのお手本を示してくれたのではないかと、思っています。

武藤彩未さんや飯田來麗さんのように、アミューズを辞めて個人で頑張るさくら学院卒業生が増えることは、手塩にかけて育てたアミューズにとっては残念なことでしょうが、大手事務所の庇護がなくても歌手や女優として活躍できることを示せたことは、「学校」としてのさくら学院の教育が間違っていなかったことの証明となったし、跡に続く後輩たちの誇りと希望になることと思います。

 

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読書メモ『グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉』

「サクラ散るダークネス」という魅力的だけど、コンセプトがいまいち見えない2019年4月のスゴ本オフオフで、猛烈に魅力的だった1冊を無事ゲットして、公私ともに忙しいのにとりつかれたように読みふけってしまいました。

舞台は、南欧の小さな港町をイメージして精緻に構築された仮想リゾート「夏の区界」。電気は一応使えるけど、あんまり便利じゃない、20世紀中頃くらいのテクノロジーの世界で、不便さを含めて楽しむような設定。この仮想世界は非常に作り込まれた歴史設定や8000人ものAIのそれぞれの子ども時代の記憶まで含めたキャラ設定など、とにかくリアリティが売り。ユーザーは、「ゲスト」としてこの仮想世界を訪れ、仮の身分、仮の家族を得て素敵な夏休み過ごす…。

ところが、ある日突然、このリゾートにゲストがこなくなってしまう。それでも、仮想世界は電源を落とされることなく運営が続けられ、AIたちだけの平和な日常がいとなまれ続けて1000年。突然、外部からの攻撃によって仮想世界は破壊され、蹂躙しつくされ、生き残った数百人のAIは街外れの「鉱泉ホテル」にたてこもり、絶望的な戦いを繰り広げる。

とにかく、出だしから文章が美しい。欧米の爽やかな青春小説風に始まって、透徹した美しさは、最後まで一度も揺るぐことなく紡がれ続ける。しかし、内容はかなり凄惨。顔をしかめるようなグロテスクな描写ではないけど、しかし、その美しい文章が語る内容は、かなりエグい。そしてインモラル感も。

はかなく、美しく、だけど絶望的。

なにより切ないのは、主人公たちが人間のように感情を持っているけど、自分たちがAIであることを知っていること。過去の美しい思い出は作り物だとわかっている。家族や友人との関係も、自分の趣味嗜好も全部作られた「設定」だと知っている。それでも、彼らが魂のある主体的な存在として、助け合い、生き抜こうとする姿に心を打たれます。

SFというのは、こんなに美しくて残酷な文学を生み出しうるんだなあと、思い知らせてくれる。

そんな、凄い一冊でした。

 

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劇メシ4月公演『キツネたちが円舞る夜』

昨夜は、代官山のカフェレストランで、「劇メシ」というお芝居を見てきました。レストランの空間全体を使って、誘拐犯に指定された身代金をめぐるドタバタコメディが展開されるんですが、最後はよくできたマジックのような衝撃が待っています。非常にエキサイティングな体験でした!

特別企画公演 4月 | 劇メシ

今回、主演の新人女性刑事を演じた佐藤日向さんと、謎の女を演じた飯田来麗さんは、さくら学院の2013年度卒業生。卒業から5年、役者として初共演だったのですが、それぞれの成長をしっかりとみせてくれました。こういう素敵な未来があるから、さくら学院の父兄はやめられません。

同じテーブルに座った人たちともお話したところ、ひとりはまだ学生の若い父兄さん、ふたりはアニメ声優として人気急上昇中の佐藤日向さんのファンだということで、そのふたりには、「ラブライブやレビュウスタァライトが好きなら、さくら学院も見たほうがいいですよ! あれをリアルでやっているのが、さくら学院ですから!」と、しっかりと布教もしてきましたw

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「さくら学院 2018年度 謝恩会」

ここ最近、アイドルグループ内のイジメや、ファンの暴力、運営の保身と無策など、さまざまな闇が世間で問題となっていますが、その対極にあるような慈愛と共感に満ちたイベントに行って、日常の塵芥に汚れた心の洗濯をしてきました

4月6日、タワーレコード渋谷店のイベントスペースで行われた「さくら学院 2018年度 謝恩会」に行ってきました。このイベントにアイドル本人の出演はなく、代わりに毎年MC兼"担任の先生"の立場で生徒達を見守ってきた、脚本家の森ハヤシ先生が、さくら学院の1年間の成長の舞台裏を語ってくれます。

さくら学院はアイドルユニットであると同時に、大手芸能事務所アミューズの育成機関でもあり、また日本の未来を担う女性を育てる「学校」でもあると標榜しています。

在学中は、小中学生であっても一流のプロであることを要求され、常に高いレベルを目指して膨大なレッスンを積み重ね、本番では大人顔負けの歌とダンスを披露します。

今回、森先生から初期の卒業生たちと飲み会を行った報告がありました。卒業生の中には、モデル、女優、声優などそれぞれ最前線で活躍する子もいれば、アミューズを辞めて自分の力で歌手や役者の道を切り拓く子もいるし、芸能界を引退して看護師や舞台監督など新しい道を歩んでいる子もいます。

とても印象的だったのは、森先生のこんな言葉でした。

「外から見た印象と、本人の感情は必ずしも一致しない。うまく行っているように見えてそうでないこともあるし、その逆もある。でも、さくら学院で高いレベルを目指して努力することが当たり前だと学んだ子たちだから、どんな道、どんな状況にあっても、あの子たちは大丈夫です」

さくら学院の「職員室」(マネージャー陣)は、常に生徒達の未来を見据えて運営が行っているそうで、たとえその瞬間には残酷な決定だとしても、卒業後の進路の糧となることを考えていると。

2018年度の開始当初、「生徒会長」を目指して何年も努力をして誰もが「次の生徒会長」と思っていた子が、指名されなくて舞台上で泣いてしまうという事件がありました。

それも、その子は「生徒会長に選ばれなかった」わけじゃない。その子の将来を考えてトーク力を伸ばすために、「トーク委員長」に指名されたのです。「トーク委員長」は、自らが喋るだけでなく、ライブMCの内容や割り振りを構成する重要な役職です。

彼女は職員室の意図をきちんと受け止め、1年間で素晴らしいトークの達人に成長しました。3月に卒業しましたが、ブログの最後の文章もビックリするくらい立派な成熟した大人のような文章でした。

今後、歌手を目指していくという彼女にとって、いろんな意味で貴重な経験になったことでしょう。

「父兄」と呼ばれるさくら学院ファンの間でも議論があった人事でしたが、最後はすべてがひとつの愛と成長の物語に昇華されたと感じました

お金儲けのためでも、一時の虚栄のためでもなく、10年、20年後の輝く未来を掴みとるために、高いハードルが与えられ、それに挑んでいく。

そんなアイドルグループと、その真摯な姿を、なんの見返りも求めずに応援し続けるファン。そんな関係が世の中には本当にあるのです。