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『ベイビーレイズJAPAN』の戦い

昨年9月に解散した『ベイビーレイズJAPAN』の日比谷野外音楽堂でのライブビデオBDを繰り返し見ている。

1度はワンマンライブを観に行きたいと思っていたのに、とうとうその機会がないまま、彼女たちはアッサリと解散してしまった。誰もが「いよいよ、これからなんじゃないか」と思っていたはずなのに。

ベイビーレイズ』は、アイドル戦国時代が一番盛り上がっていた2012年に、大手芸能プロダクション「レプロエンターテイメント」とメジャーレーベル「ポニーキャニオン」のプロジェクトとして始まった。

レプロに所属する、モデル志望や女優志望の少女達を集めて「君たちは、これからアイドルになるんだ」と言い渡し、次々と課題を与えてクリアさせ、アイドルとして成長する様子をYouTubeの動画で公開していく。

明らかに、当時大成功してブームの先頭を突っ走っていた「ももクロ」を意識していた。ももクロの真似はほかにもあったけど、もっとも露骨でより演出過剰の「やらされている感」満載のももクロフェイクだった。

ももクロと同様に「挑戦する」自分たち自身をテーマに歌い、AKBやももクロのライブ会場の外で宣伝ビラを配り「乗っ取りアイドル」を名乗ってハングリー感を演出しようとしたけど、ネットでは「タクシーでやってきて、ビラ配って、またタクシーで帰る。プロモ感満載」と揶揄された。

実をいえば、ももクロこそ「やらされている」アイドルの極北だったのだけど、メンバーとマネージャーK氏のお笑い指向の強さが、それをギャグに昇華したところが魅力だった。一方、ベビレのメンバーと運営は真面目すぎて、そのセンスがなかった。

それでも、成長期を過ぎたももクロに飽きて、熱心な“モノノフ”からベイビーレイズに鞍替えした人を複数知っている。楽曲的には、より泥臭いロックテイスト。しかも、さすがレプロの美少女ぞろい、というギャップ萌えは僕も感じていた。だけど、あまりのフェイク感から、見たいけど見たくないというキモチだった。

「デビューから2年以内に武道館ライブができなかったら解散」というのが、ベイビーレイズの最大のギミックだったのだけど、結局、武道館を埋めるだけのファンは集められず、代わりに謎の「署名運動」を行なって、満員ではないけど、とりあえず武道館でライブを開催した。ある意味、敗北宣言だった。

この敗北から、ベイビーレイズの本当の戦いが始まった。グループ名を「ベイビーレイズJAPAN」と改名し、センターの林愛夏は、覚悟を表すために金髪にした。

この翌年、TIF2015のメインステージで初めて生のベビレを体験した。楽しかった。肩の力が抜けていて、観客と一緒に楽しむという空気に満ちたライブで、その場で隣り合わせた「虎ガー(ベビレファン)」と肩を組んで盛り上がった。やらされているアイドルではなく、自分たちが楽しんでいる、エンターテイナーのステージだった。

この年の春、彼女たちにとって重要なアンセムが生まれた。改名して最初のシングルのカップリング曲『夜明けBrand New Days』だ。夏のTIFではやらなかったくらいで、まだ僕も知らなかったのだけど、徐々にアイドルヲタクの間で、「ベビレの“夜明け Barnd New Days”は熱い」という認知が広まっていった。

やがて、アイドルフェスでは、『夜明けBrand New Days』で「イエッタイガー!」と叫びたいヲタクが、ベビレのステージに集まるようになっていった。企業やメディアが仕掛けた作り物のアイドルではなく、アイドル好きのアイドルヲタクが自分たちから「どうしても見たい」と思うアイドルに彼女たちはなった。

それを象徴する動画がある。TIFが開催されたお台場で、夕日の中ライブステージ間を歩いて移動中のオタクたちが、ベビレの『夜明けBrand New Days』が離れた会場から聞こえてきたとたんに、立ち止まって興奮し、飛び跳ねだす。

アイドルシーンには、すべてのアイドルオタクを夢中にして熱狂させるアンセムがある。Buono!の『初恋サイダー』、BiSの『nerve』、Dorothy Little Happyの『デモサヨナラ』『恋は走り出した』。ベイビーレイズJAPANの、『夜明けBrand New Days』もそのひとつになった。

ベビレの人気は、アイドルオタクでない人にも届きはじめ、ライブ会場には若い女性ファンも増えていった。日比谷野外音楽堂のライブビデオの中では、増えた女性ファンを目の当たりにしたメンバーが「Perfumeさんみたい!」と喜ぶシーンがある。

しかし、そんな人気の盛り上がりに対して、唐突にベビレは解散宣言をしてしまう。理由はよくわかっていないが、レーベルのポニーキャニオンがアイドル事業から撤退し、ベビレもインディーズになったことと、メンバーの個々の活動が活発化したことが、重なったのが原因かもしれない。

TIF2018の野外ステージで、僕にとって最後のベビレを観た。
挑戦と不屈を歌う彼女たちの歌には、初期にあった「歌わされている」感は微塵もなく、広い野外ステージの周辺一帯は数千の観衆の熱狂で埋め尽くされた。僕も全力で「イエッタイガー」を叫び、ジャンプした。

 

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