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アイドルは誰がために歌い踊るのか? 東京女子流【CONCERT*07「10年目のはじまり」】

昨夜は中野サンプラザで4人組女性"アイドル"『東京女子流』のコンサートに行ってきました。

一部のDJタイム以外は全曲に生バンドがついて、ファンキーなアレンジの最近の大人っぽい楽曲も、初期のアイドル曲も全部入りの楽しい構成でした。

とても素晴らしいライブでしたが、同時に「女性アイドルとは何か」「彼女たちは、なぜ歌い踊るのか」について、改めて考えてしまいました。

 

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■"お姫様"になれなかったアイドル

東京女子流は大メジャーレーベルのエイベックスが、アイドル戦国時代の2010年5月にデビューさせた、「ボーカル&ダンス」ユニットです。年齢不詳の5人の美少女が、エイベックスらしい都会的な音楽と衣装で歌って踊るグループでした。

同じ2010年メジャーデビューのももクロとは、ずっと同期の友情関係を保っていましたが、大手なのに地下アイドル同然に出発したももクロに対して、女子流は大手らしいプロモーションで、最初から地上波テレビの仕事がありました。順調に知名度を上げて、2012年には史上最年少で日本武道館でのライブを実現しましたが、残念ながらここが頂点となって、その先に行くことができませんでした。

地下から上がったももクロが2012年に紅白歌合戦の出演を実現し、SSA横浜アリーナ西武ドームと大箱を瞬殺する破竹の勢いとなったのと対照的に、同時期に女子流の成長は止まり、しだいに低迷していきます。

差別化のためか、2015年1月に「アーティスト宣言」をして、アイドルフェスとアイドル雑誌の出演を停止。同時に、アイドル性の高い初期の人気曲『オンナジキモチ』などを封印してしまいますが、むしろこれが逆効果でした。

さらにボーカルの中心だった小西彩乃が腰痛のため活動休止し、そのまま引退。動員力はどんどんと縮小していき、2016年には250人〜300人規模のライブハウスでの活動となっていました。

 

■"アーティスト"からの脱却

転機は2017年。スタッフが入れ替わったタイミングで、メンバーが自分たちの意見で、アイドル現場への復帰を表明します。

2017年夏のTokyo Idol Festival。「アイドルの聖地」と呼ばれる伝統の野外ステージで、封印していた『オンナジキモチ』を披露しました。僕は2日目ラストを現場で見ましたが、前日の披露で「復活した女子流いいぞ」というクチコミがすでにツイッターで広まり初めており、会場に集結した数千人が一体となって『オンナジキモチ』を踊りました。

そしてアーティスト宣言後のEDM曲『深海』も、メンバーは「ブーイングを覚悟した」そうですが、音楽好きが増えた現在のアイドルオタクに「女子流すげェ」という再評価を浸透させることになりました。

TIF2017の野外のトリは、当時人気急上昇中だったアイドルネッサンスでしたが、トリ前を務めた女子流は「格の違い」を見せつけるレベルの高さでした。

そこから、東京女子流の復活が始まりました。翌2018年から『お姫様になれなかった私達の、続きの話。』という開き直ったキャッチコピーで再出発を宣言し、アイドルやアーティストといった肩書に囚われずに「私たちの音楽」を届けるために「ずっと女子流でいたい」と歌い踊り続けることを宣言しました。

地道なライブ活動で評価を積み上げて、2011年にクリスマスライブを行ったキャパ2222人の中野サンプラザにようやく戻ってきたのが、昨夜のライブでした。

 

■誰がために"歌い踊る"のか

多くのアイドルが、ステージ上で歌って踊るアイドル活動を若い時だけの"一時的な"の仕事としてやっています。いまのアイドルはダンスのレベルが高く、体力的にもハードなので、身体を壊して途中退場するアイドルも多くいます。

たとえアイドルとしての仕事に問題がなくても、学業との両立や自分の将来像とのミスマッチから引退する子、同じ芸能でも女優、声優、シンガーソングライター、さらにプロデュース側へ転身していく子もいます。

女性アイドルは「若くて、可愛くて、無邪気で、元気」という属性を武器にして、未熟な歌とダンスを売っていきます。そこには常にアートとして「フェイク」の疑いの目が向けられるし、水商売と同等のビジネスとして行われている側面も確かにあります。

それゆえに、アイドルは常に「かりそめ」の存在や職業としてみられがちです。とても華やかだけど、いっときだけの栄光であると。

しかし、その中でも歌って踊り続けようとしている"アイドル"もいます。Perfumeは全員が30歳。NegiccoはリーダーのNaoが31歳で、アイドルのまま結婚しました。2008年結成のももクロもいまだに元気に活動しています。

未熟だったスキルを磨いて武器に変え、歌とダンスで観客を魅了し、実力で手に入れた固定ファンに支えられて歌い踊り続けています。

そこに「お姫様になれなかった」東京女子流も続きます。大手事務所のお仕着せでデビューしながら低迷し、地道な努力で復活した物語は、先行したPASSPO☆も、女子流よりも新しいベイビーレイズJAPANも経験していますが、彼女たちは結局、解散を選びました。

なぜ、パフュ、ネギ、ももクロ、女子流は、歌って踊り続けるのでしょうか。おそらく「歌って踊る」ことこそ、彼女たちの真実であり自己表現だからではないかと思っています。

誰かの欲望に消費されるためにアイドルをするのではなく、自己実現としてアイドルを天職とする人たち。

ももクロも女子流も、最初からそうではなかったけど、誰かのためにではなく、自分たちが主体的にやりたいこととして、大袈裟に言えば人生の再構築があったのではないか。
主体的にやるようになったからこそ、東京女子流の復活があったのではないか。そう思っています。

 

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