Fullfull Pocket(フルフルポケット)『Pop Classic LIVE TOUR 2018-2019~POP!POP!FINAL!~』
昨日は、渋谷WWWでアイドルユニット「Fullfull pocket」(フルポケ)のライブに行ってきました。
フルポケは、元々は日本唐揚協会とタイアップした「からっと☆」というグループでした。2010年〜2015年くらいのアイドル全盛期には、さまざまなコンセプトのアイドルが生まれました。
「からっと☆」はその安易に思えるバックグラウンドとは裏腹に、大手モデル事務所の美少女モデルから選抜して、AKBやSMAPに曲を提供していた作曲家の多田慎也氏をサウンドプロデューサーに据えた、かなり本気度の高いアイドルでした。
多田慎也氏の最大のヒット作は、AKB48の『ポニーテールとシュシュ』ですが、ももクロの好きな人には初期の名曲『白い風』の作者と言った方がピンと来るかもしれません。
とにかくアイドルに欠かせない“青春の儚いキラメキ”を、さまざまな手法を使ってエモーショナルに歌わせることにかけては天才的だと僕は思っています。
「からっと☆」は可愛い子ばかりで、良曲しかない、ということで一部のアイドル好きの間では評価が高かったのですが、1stアルバム発売を目前にして、突然の解散に追い込まれてしまいました。この理由は未だに明らかになっていません。
しかし、解散の2カ月後に「Fullfull pocket」としてリスタート。その後、ちょっとづつ活動を加速しながら、ようやく一昨年末に“からっと☆”時代の楽曲も含めた2枚組のフルアルバムを発売に漕ぎ着けたのですが、年明けに長年頑張ってきた中心メンバーの2名が卒業して再び存続の危機に。
そこで、からっと☆時代に最年少の小学生だった石井栞さんがリーダーとなって引き継ぐことを宣言し、新メンバーを入れてフルポケ2期として再スタートを切ったのが昨年4月。
未経験者2人を含むゼロからに近いリスタートでしたが、運営もかなり本気が入ってきて、よりコンセプチュアルな楽曲や衣装を用意する一方で、新規のオタクが盛り上がれるように、コール動画を公式側が用意したり、ノンストップ無料ライブをやったりチェキ券付きの格安チケットを販売するなどの積極的な経営に打って出て、中心メンバー離脱で減ったファンを呼び戻したり新規ファンを獲得していきました。
運営だけでなく、メンバーの努力も素晴らしく、歌もダンスも観る度にどんどんレベルアップしていきました。初めて会ったときは、最年少で小さくて元気ばかりだった石井栞さんは、リーダーとして美しくしっかりと成長し、いまや立派なグループの大黒柱的な存在になりました。歌の安定感、ダンスの表現力において、まだ伸びしろはあるにせよ、現在の日本のアイドルシーンにおいては、トップレベルに近づいているのではないでしょうか。
“フルポケを大きくしたい”。みんなが愛したこのグループを、上を目指してもっともっと有名にしたい。彼女の熱い思いがちょっとずつ実を結んで、昨年は横浜アリーナのメインステージに立つチャンスを掴めたし、ことしは4月からFM富士でレギュラー番組も始まりました。
フルポケの現場(ライブのことをオタクは“現場”と呼びます)は、熱さと一体感と優しさに満ちた世界です。
盛り上がる曲では楽曲をかき消すがごとく怒号のようにコールが響きますが、多田慎也氏が生演奏するバラードパートでは、全員が聞きいって完全な無音状態になります。写真撮影やメンバーに花束贈呈などがあるときは、何も言わなくても前列の客はしゃがみ、中程の客は腰をかがめて観客全員がメンバーのセレモニーに参加できるように気が配られます。
アイドル現場は、金と欲と承認欲求にまみれた世界のように誤解されがちですし、実際そういう側面もゼロではないです。
その一方で、歌うこと踊ることが大好きで夢に向かって頑張る女の子たちがいて、歌とダンスと可愛い女の子が大好きで純粋な「好き」という気持ちで応援するファンがいる。
そんなアイドル現場の楽しさと美しさが、フルポケには確実にあるのです。